Z8 VS EOS R8 ニコン・キヤノンのナンバーエイト
カメラ業界のリーディング・カンパニーといえば、言わずと知れたニコンとキヤノン。
そんな2社が今年、奇しくも同じナンバー「8」を持つ新型カメラを発表しました。
私が連想したのは、ラグビーの花形ポジションである「ナンバーエイト」。
カメラメーカー2大巨頭のナンバーエイト対決、やっちゃいました。
ナンバーエイトとは?
いきなり脇道にそれますが、ナンバーエイトはラグビーのポジションの一つで、フォワード陣の後方・バックローの真ん中に位置し、攻守ともに高い能力が要求される花形ポジションでチームのリーダー格となります。
アメフトで言うところのクオーターバック、サッカーで言うところの背番号10です。
ニコンのナンバーエイトZ8!フラッグシップ機Z9のスペックを継承
今年の春、突如発表され5月下旬に発売されたというセンセーショナルな登場をしたニコンZ8。
驚くべきはフラッグシップのZ9とほぼ同じスペックを小型ボディに凝縮した点で、有効4571万画素、高速連続撮影最大20コマ/秒、ハイスピードフレームキャプチャーなら約120コマ/秒まで撮れる恐るべきカメラ。
フラッグシップ機はスポーツを毎日撮る報道機関御用達機材で、当然Z8は動きモノに強いはず。
キヤノンのナンバーエイトEOS R8!軽快さと上位機とタメを張る性能
毎年恒例のカメラショー・CP+で特に注目されたカメラがEOS R8。
軽量コンパクトでフルサイズ入門機・RPの後継機かと思いきや、大雑把に言えばボディ内手振れ補正だけ省略したR6mkIIというべきスペックで、有効2420万画素、連続撮影速度最高約40コマ/秒 (電子シャッター時、メカシャッター使用時は最高約6.0コマ/秒)と侮れない性能。
ちなみにCP+ではR8の動きモノへの強さを体験できるよう自転車のパフォーマンスが行われていました。
決戦の舞台はPIST6!
動きモノに強そうな両者、対決させるにあたりスポーツが良さそうと考え、屋内自転車競技・PIST6で行いました。
いわゆるオリンピック競技でもあるケイリンなのですが、会場は一般的な競輪場と異なり客席とトラックの間に金網や透明樹脂の仕切りがなく、その上天候に影響されない屋内で競技用自転車による平均時速60km台、最高70kmのバトルが展開されるため、動きモノのベンチマークとして理想的です。
前置きが長くなりましたが、Z8 VS R8の比較スタート!
共通設定
AFは動体追従(ニコン:AF-C、キヤノン:SERVO)、AFポイントは全点。ホワイトバランスは太陽光。
レンズは70-200/2.8となります。
なお、使用機材のマップレンタル1日レンタル料は
〇Z8:20,000円+Z 70-700/2.8:4,500円+補償10%:2,450円=26,950円
〇R8:10,000円+RF 70-200/2.8:4,800円+補償10%:1,480円=16,280円
静止状態
画質の比較のために、スタート前の静止状態で比較します。(1/100秒、ISO500)
ここは画素数の多いZ8優性で、カーボン地が見えるくらいにまで解像します。
R8はさすがに画素数なりといった感じです。
スローシャッター対決、ローリングシャッター現象は見られるか?
まずはローリングシャッター現象について説明します。スチールの場合メカシャッター(フォーカルプレーンシャッター)を用いない画像センサーによる電子シャッターで撮影すると、高速で横方向に動く物体が斜めになったり、高速回転するモノがいびつになったりする現象です。(参考:イメージセンサInfo様・【図解】ローリングシャッター現象(歪み)って何?ローリングシャッター解説)
シャッタースピードを1/100秒F値5.6にして比較しました。
Z8はZ9と同じくメカシャッターレスなので、この現象を極力抑えられており、席の斜め歪みやホイールのスポークもまっすぐに見えます。
驚くべきはR8、こちらはスポークがすこし歪んでいますがぱっと見は気にならず、席はまっすぐです。
R8はメカシャッター付きなのでこちらも試してみました。スポークの歪みはありませんが、連写性能との兼ね合いでそこまで優位性は無いと言えます。
AF能力と高速連写対決
次は気になるAF能力と高速連写能力の比較です。
シャッタースピード1/1000秒で両カメラの最高連写速度で試しました。比較する状況として2つ、1つはホームストレッチに差し掛かる前のカーブでのシーンを、それぞれ4カットごと10点比較。もう一つはゴール時の連続10コマをGIFにしました。
Z8はハイスピードフレームキャプチャーで約120コマ/秒まで撮れます。ただし画質はJPEG(Normal)となり、拡大するとだいぶ粗は目立ちます。
R8は電子シャッターによる最高連写は40コマで、さすがにZ8には見劣りしますが高画質でもコマ数が確保できるのは魅力です。
感想:Z8の信頼感と器用さ、そこに食ってかかるR8
Z8はフラッグシップ機の機能をほぼ丸ごと継承したモデルであるため、信頼感が置ける画を出してくれます。120コマ/秒の高速連写はもはや写真判定機材としての可能性を感じ、特殊用途でも何でもできそうな器用さすらあります。
一方R8は、さすがにいじわるな見方をすればZ8や他の上位機種に少し見劣りする点があります。しかし同クラスの旧機種・EOS RやRPと比較し圧倒的な進化を遂げ、むしろZ9より小型化したとはいえZ8は幾分重いのに対しR8は極めて軽量でずっと保持していて苦になりません。
ニコン・キヤノンのナンバーエイトは、次世代フラッグシップへのマニュフェストか
来年2024年は夏季オリンピックイヤーです。
ニコン・キヤノンはオリンピックの頃に威信をかけてフラッグシップ機を投入するのがお約束ですが、その前年たる今年、クラスは異なりつつも同じナンバー「8」を持つフルサイズミラーレス機を投入したということで、両社の技術進歩を感じさせたナンバーエイトから次世代フラッグシップ機へ託されるボールを持ってどう攻めるか、期待は高まります。
ニコンは当然メカシャッターレスで攻めるでしょうし、キヤノンはフラッグシップでありながら軽快さを確保しそうなど、いちカメラファンとしてはそんな期待が止まりません。